2016年3月に読んだ本
陰陽師
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1991/02
- メディア: 文庫
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「呪とはな、ようするに、ものを縛ることよ」
「---」
「ものの根本的な在様を縛るというのは、名だぞ」
「---」
「この世に名づけられぬものがあるとすれば、それは何ものでもないということだ。存在しないと言ってもよかろうな」
「式神を使うというのは、むろん、呪によるものだが、人を使うのも呪によるのだ」
「---」
「銭で縛るも、呪で縛るも、根本は同じということさ。しかも、名と同じで、その呪の本質は本人ーーつまり、呪をかけられる側の方にある……」
「うむ」
「同じ銭という呪で縛ろうとしても、縛られる者と、縛られぬ者がいる。銭では縛られぬ者も、恋という呪でたやすく縛られてしまう場合もある」
「ううむ」
「前から聞こうと思っていたのだが、おまえ、この広い屋敷に、たった独りでくらしているのではないか」
「だとしたらどうなのだ」
「淋しくはないのかと思ってな」
「淋しい?」
「人恋しくはならぬのか」
博雅は、初めて、晴明に問うた。
問うた博雅のその顔を、晴明が見つめ、小さく微笑した。
この日、初めての晴明の笑みであった。
「どうなのだ?」
「それは、淋しくもあろうよ。人恋しくもなろうさ」
他人のことについて話すように、晴明は言った。
「しかし、それは、この屋敷に、人がいるとか、いないとか、そういうこととは関係がないぞ」
「ではなんだ」
「人は、独りよ」
「独り?」
「人とは、もともとそういうものだ」
「人は、もともと、淋しく生まれついているということか」
「そういうところだろうよ」
陰陽師 鳳凰の巻
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/10
- メディア: 文庫
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「どう凄いのだ」
「おまえの言う通りだからさ」
「ーーー」
「鬼も神も、つまるところ、人との関わりなくしてはこの世にいない」
「なに?」
「人の心が、神にしろ鬼にしろ、それをこの世に生じさせるのだ」
「まさか呪によってなどと言うつもりではないだろうな」
「まさかではない。まさにその呪によって、神も鬼もこの世にあるのだ」
「ーーー」
「この地上から、全ての人が消え去るならば、神々や鬼もまた、この地上から消え去るのだよ」
「晴明殿、実際に焼かれずとも、身体がこのようになってしまうことはあるのでございますか」
「はい。呪にはそのような力がございますーー」
晴明は頭を下げて言った。
「ほれ、博雅ーー」
博雅に向かって、小さな赤いものを投げた。
何ごとかと思って、博雅が手を伸ばした時、
「それは焼けた石ぞ」
晴明が言った。
両手で、晴明が投げたものを受けた瞬間、
「熱っ」
博雅は声をあげて、両手で受けたものを放り出した。
それが床を転がって、為輔の膝先で止まった。
よく見れば、それは焼けた石などではなく、ただの、小さな赤っぽい石であった。
「どうだ、博雅、今、熱さを感じたろう」
「う、うむ」
博雅はうなずいた。
「これも呪でございます」
晴明は言った。
「なるほど、熱いと思わせれば、熱いものでなくとも、人は熱さを感じてしまうのだな」
「はい」
「ようは、人の心の問題ということか」
「その通りでございます」
あとがき
アイデアをひねり出す一番良い方法というのは、これはもう断言しておくが、
”ただひたすら精神を集中してそのことについて考えること”
であろうと思う。
脳がとろけて鼻の穴から流れ出てしまうくらい考える。ただそのことを考え続けるーー他にも色々方法はあるかもしれないが、これが最良の、しかも、もっとも効率の良い方法であることは間違いない。
陰陽師 竜笛の巻
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/03
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アルケミスト
- 作者: パウロ・コエーリョ,山川紘矢,山川亜希子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2013/07/09
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